/ソーダアイス機式/



新緑の爽やかさなんてあっという間に過ぎ去って、ただ毎日が暑い。
父は、出て行った母と違って倹約家で、アイス一つにもレシートを要求してくる。
うざい。
暑い。
ぐだぐだとそんなことを部室で寝ながら呟いていると、後輩の機式レオが影をつくって覗き込んできた。
「先輩」
「あいよ」
「部誌の締切が来週なんですが」
無表情なメガネの縁は妙にこじゃれた深緑色で、生意気だ。
天井を遮る後輩男子をじっと見て、私は誤魔化すようにニヘラと笑った。
「そんなにだらけていても、間に合いそうなんですか」
直球で遊びなしにぶつけてくる催促もこれまた可愛くない。
耳元で絡まった髪を窓の光に透かし、枝毛を裂いて青空を分割。
「レオー、せんぱいは暑くて何にも出来ないよぉ」
「はぁ」
「アイスおごって、アイス」
無言。
そして、バタンときしんで蝶番。
ころん、と転がった私に背を向けて、レオはぴんと背筋を伸ばし部室の古いドア向こうに消えた。
……まあ?
後輩にアイスをおごれという先輩は我ながらどうかと思いましたね。
女子としても、省みれば今の恰好と行動はどうかと。
「でもちょっと冷たいんじゃないかぁ~。二人きりの部員じゃなーい」
組んだ腕に額をうずめて足をばたつかせる。
くだらないメールでもしようかと、こっそり持ってきているスマホを出そうかと思ったけれど起き上がることすら面倒くさい。

と。
ぴたりと冷たいものが首筋に触れた。

「ひゃっ」
「これでいいですか」

後輩が、ソーダアイスの袋をつまんで、そこにいた。
私が呆けていると、何が楽しいのだろうか、今度は額に当ててきた。
そして、間抜けな私をじっと見つめて、口元だけで笑った。

う、うおお。

ずるい。
とてもずるい。
何もなくても暑いというのに、アイスの効果を台無しにしてこの後輩め、生意気だ。





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