蝉の死骸




地上へ孵化してから死ぬまでの時間をいつだか理科で教わった。
スニーカーの前で羽を震わせるでもなくひっくり返っておなかを見せた六本足の油蝉に、埃が積もっていた。
コンクリートだから中々土には返れないだろう。
空は秋晴れをかすかに覗かせてはいたが八割方雲でできている。
涼しい九月の風に傍を車たちが通っていく。
「ねーねー。お姉ちゃん。この蝉死んでいるの?」
十も下の従妹が指差して無邪気に叫んだ。
「うん」
答えて手を握り返す。
「もって帰って埋めたげようよ」
「庭に?」
「うん。物置のそばに、お墓作るの」
見つけたそばからお墓を作っていてはきっと両手で足りなくなると思うけれど。
傍の空き地に黄土のススキが群れていた。蜻蛉が奥に一匹死んでいた。
もう秋だ。
年に一度トンネルを潜り抜けるたび少しずつ私達も彼らへ近付いていく。
気がつけばねこじゃらしはふさふさとしていて月は高く、今年もその入り口に立っていたのだった。






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